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俺の話しを聞けVol8 経済成長が「幸せ」につながらない理由
 
 私たちは何かあると「景気が良くなった」とか「景気が悪いから」だとか言って経済成長を求めてしまう。
 日本社会は「豊か」であるが、それが人々の幸せには結びついていない。GDPが中国に抜かれ、世界第3位になったとはいえ
 「経済大国」であり「非常に豊かな国」であるはずだ。なのに幸福感にはほど遠い。生活の充実感も乏しい。
 マクロ経済の観点から、豊かさ=生産、幸福=消費という概念から考えてみると、生産が増えているが消費が増えていない
 ことが原因の一つだ。つまりGDPの伸びだけを経済成長と呼ぶことで、日本の経済成長は国民の「幸福成長」には何も
 寄与してこなかったことになる。戦後の荒廃した何もない時代はともかくとして、2002年から07年にかけて戦後最長の
 景気回復を果たしたといわれる期間(5年間)の実質的なGDPは505兆円から561兆円、率にして1.1%の増加。
 しかしこの間の実質家計消費は291兆円から310兆円へ19兆円、率にして6.5%しか拡大しなかった。就業人数はわずか
 82万人。1.3%しか増えず実質雇用報酬の伸びも2.6%に止まった。さらに民間勤労者が受ける現金給与の実質総額は
 1%以上「低下」してしまったのだ。これでは消費が伸びるわけもない。08年9月にリーマンショックを向かえるがこの影響は
 GDPでは9%弱の減少だが就労者の減少は1%弱、実質雇用報酬の低下率も2%程度にすぎなかった。したがってGDPの増減が
 イコール「幸せ」にはつながっていないということだ。
 何のための経済成長なのか、何のために経済活動はあるのか?
 本来それは人々の暮らしを充実させるためにある。その本質を突き詰めないままに、マクロ経済活動の成果を測る尺度を成長率に
 おいてしまう考え方が経済学者も政治家にもある限り、およそ「日本国民の幸せ」なんてものさしは生まれてこない。
 私もミュンヘンにいて感じたことだが、欧州で暮らした日本人の多くは、日本よりGDPが小さいのに、彼らは労働時間は少なく、
 バカンスにも出かけ豊かな日常生活を送っていることを不思議に思っている。その理由の一つはフローの成長を求める日本と、
 ストック型社会である欧州の違いだ。例えば高額な住宅を作っては2〜30年で壊してしまう日本に対して、欧州は100年も 
 住める。建築コストを100年に分割するシステムが出来ているからだ。アパートという考えもめったに使わない庭を独り占め
 して狭い空間をさらに塀で囲うのではなく、共有することでプライバシーとコミュニティーを共存させる。土地利用の仕方も
 投資のあり様も働き方も、発想の根幹が違う。二つ目は「社会保障制度」の違いだ。現代の日本の若者の多くは「どうせ俺たちが
 年寄りになったら年金制度なんて崩壊してしまう、その時になったら国が生活保護してくれるだろう!」なんてバカなことを
 考えている。欧州の多くの国では、年金制度が明確になっていて、60歳になればそれまでの収入の80%が死ぬまで保障されて
 いる。したがって定年延長して働く人もいない(これは就労者の循環にとっては機能的)、さらに老後のことを考えて無理して
 (消費を抑えて)貯蓄する必要もないので、結果的に消費の循環に作用している。
 文化や歴史の違いがあるにせよ、社会構造が「幸せ」に対して向いていることは確かだ。
 少子高齢化がここまで進んでしまった中で、この状況を変化させることは難しいとは思うが、今回の大震災を機に国家の今後の
 成長戦略を考える最大のチャンスととらえ、「新たな幸せ向き国家戦略」を立てることを望む。
 
 
 
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